清朝建築様式が残る「函館中華会館」

函館中華会館の概要

函館中華会館とは、函館市大町にある中国清朝の建築様式で建てられた建造物です。
函館は古くからインターナショナルな文化を形成してきた都市として知られていますが、函館中華会館も函館のそんな一面をある意味象徴しています。

函館中華会館が建てられたのは明治時代にさかのぼり、1906年でした。
ただし、できた早々火事で燃えてしまいます。
そのため、再建となったのですが、その際、関帝廟形式が採用されました。
関帝廟というのは、関帝(関羽のこと)を祀る廟のことです。

当時、函館に住んでいた華僑たちがプロジェクトのリーダーとなり、1910年に無事再建を果たします。
函館中華会館の大きな特徴は、清朝の建築様式に倣い、釘を1本も使用せずに建てる独特の建築様式を採用していることです。
清朝の建築様式は中国歴史のなかでも特に独特であり、その特色は多様な文化と歴史的背景に起因しています。

清朝は1644年から1912年まで続いた王朝で、この期間には多くの壮麗な宮殿、寺院、庭園、また民間の住居が建設されました。
特に北京の故宮や頤和園などは、清朝の建築の精妙さを如実に示しています。
清朝の建築は木造が主体であり、石やレンガは基礎や装飾に用いられることが多かったです。
屋根は一般に重厚で、緑色や黄色の瓦が用いられることが多く、その形状はしばしば曲線美を誇りました。
また、建物はしばしば対称性を持ち、中央の軸線を基準に配置されることが一般的です。

内部の装飾にも非常に細かい技術が費やされており、彫刻、書画、陶磁器などが豊富に使用されています。
特に木彫りは非常に精緻で、神話や歴史、風俗など多岐にわたる主題が表現されているのが特徴です。
色彩も非常に鮮やかで、特に朱色がよく用いられ、それをさらに金箔で装飾することもよく用いられる手法でした。

また、道教や仏教、儒教といった中国の宗教や哲学に影響を受けた建築様式です。
その影響は、建築物の配置や内部の祭壇、装飾品によく表れています。
函館中華会館もそんな特色を色濃く反映した、函館市内においても特に異彩を放つ建造物です。

函館中華会館の見どころ

現在、函館中華会館の内部は一般に公開されていません。
以前は一般公開されていたのですが、ときどき期間限定で公開されることがあるぐらいで、今は基本的には外観の見学のみが可能です。
内部を見れないのは残念ですが、その外観だけでも見る価値はたっぷりあります。

日本には神戸や横浜にも中華街がありますが、それらの都市に存在した中華会館はほとんどが戦火で失われ、今では当時の建築様式を残している建造物はないのです。
そんななかにあって、函館中華会館だけが清朝の建築様式を今に伝える建造物としての地位を守っています。
登録有形文化財として大切にされている建物です。