アイヌの熊送りの儀式をテーマにした絵本『クマと少年』(あべ弘士)
『クマと少年』は、文字通り少年とその仲良しのクマ、キムルンを巡る物語です。
少年とクマは兄弟のように幼い時から仲良く暮らしていましたが、やがて別れを迎えなければなりません。
というのも、アイヌの人たちにとってクマは神聖な動物であり、神様の使いと言われていることに理由があります。
アイヌの人たちには「イオマンテ」という儀式があり、その儀式では神様の使いであるヒグマなどの神聖な動物を神様のもとに返すため犠牲に捧げるのです。
殺した動物はみんなで分け合って食べられますが、それが五穀豊穣の祈りとなります。
この絵本では、主人公の少年の友達、クマのキムルンがイオマンテの犠牲に選ばれました。
ところが、キムロンは殺される前に森に逃げてしまいます。
少年はやがて大人になり、かつての友であったキムルンを神のもとに返そうと山や森を探し始めるのです。
イヨマンテの儀式のために、キムルンは果たして殺されるのでしょうか。
アイヌの人たちと神様との関係をテーマにした絵本『パヨカカムイ-ユカラで村をすくったアイヌのはなし-』(かやの しげる)
この絵本は、アイヌの貧しい家族を主役に、アイヌの人たちと神様との関係を描いた物語です。
アイヌの神様のほとんどはアイヌの人たちに恵みをもたらしてくれる存在ですが、この絵本のテーマである「パヨカカムイ」という神様は人々に害をもたらすのが役目とされています。
天然痘などの流行病を司る神様で、この神様が姿を隠して弓を打つと、それに打たれた人は病気になると言われています。
この物語では、貧しいアイヌの家族の父親が子どもたちに昔話を聞かせるところから始まります。
絵本のタイトルにある「ユカラ」とは、アイヌの言葉で昔話のことです。
父親がある日、ユカラを子どもたちに聞かせていると、パヨカカムイが家の外にいることに父親は気づきました。
そこで父親は得意のユカラと供物をパヨカカムイに捧げたところ、その夜の夢枕にパヨカカムイが現れ、一家に病気を防ぐ方法を教えてくれたのでした。
さて、この家族は無事病気を避けることができたのでしょうか。
アイヌの言葉の不思議なリズムを楽しめる絵本『ヤッホー ホイホー』(スズキ コージ)
タイトルの「ヤッホーホイホ―」とはアイヌ語の掛け声です。この掛け声を合図に動物たちが集まってお祭りを始めます。
この絵本では、このような不思議な響きの言葉がたくさん出てきます。
意味はわからないながらも、口に出してつい読んでみたくなるのがこの絵本の魅力です。
それと同時に、子ども向けの絵本とは思えないほど荒々しいタッチのプリミティブな絵も大きな魅力です。
1ページ1ページがまるで絵画のように迫ってきます。